BS2で深夜放送されたのを録画していたのをスッカリ忘れていて、調子の悪いレコーダーのHDDフォーマットの直前に思い出して慌てて見ました。
都内で単館上映もされたこともあり、映画館で是非見よう見ようと思っていた映画ですが、結局時期を逸してズルズルと現在に至ってしまいましたが、いや勿体ないことをしたと思います。名作です。
どんな映画でどういうあらすじでどんな人が作ったのか等々、アウトラインは公式サイトを見ていただくとしてさて、ツール・ド・フランスというからさて本家フランス人が作った茄子みたいな映画なのかなと思ったら、蓋を開けたらこれが全編犬アニメでした。以下、犬の話です。
犬好きというか、むしろ犬を飼っている人が観て「ああ犬だ」と自然に思える映画は、アニメでも実写でも珍しい部類ですが、ベルヴィル・ランデブーは犬を主役に取り上げているわけでもなく、図らずもリアル犬映画として成立しています。
ベルヴィル・ランデブーに出てくるのは、主役のおばあさんについてまわるブルーノという垂れ耳の大型犬。その目つき、その怠惰な挙措やあつかましさ、皮のたるみ具合は、垂れ耳犬を飼っている人なら見覚えがあるに違いない犬なのです。
たとえばシャンピオンのベッドにあがってきたブルーノが眠るのは、遠慮してシャンピオンの足元、ではなくて胸の上ですし、しかも寝ているシャンピオンをグルグル踏みしだいてとぐろを巻いた挙句に人の顔にオシリをなすりつけてくるなんて、犬と寝起きを共にした人でなければ判らない犬のあつかましさ・重量感(おそらく20kg以上ある)が、ストーリーの要所要所でフッと挟まれてくるのです。
すばらしいことにブルーノは美化されたマスコットではなく、劇中あくまで犬として描かれます。不細工なブルーノは急に忠誠心や理性に目覚めたりして、あなたの期待を裏切ることはありません。これが重要。
ブルーノは塞ぎこんだシャンピオン少年の興味を引こうとしておばあちゃんが与えたものですが、結局ブルーノはシャンピオンが心から求めたものではありませんでした。シャンピオンが本当に欲しかったのは自転車であり、夢である自転車選手への道を歩み始めたシャンピオンは、以降、ブルーノに興味をさほど示しません。
こうしてある意味で無用のものとして、ブルーノが二人きりの家族に加わる展開には妙なリアリティがあります。
これまで、個人的にリアル犬アニメはディズニーが80年代に作り、ブラッドハウンドの仔犬を可愛く描き切るという偉業を成し遂げたきつねと猟犬が後にも先にも唯一であろうと思っていましたが、まさかフランスからこれを凌ぐものが出てくるとは思いもよりませんでした。 ヨーロッパは魔境です。
国産アニメともディズニーとも異なる、前例のない独特のアニメ映画で、愛犬家・アニメファンならずとも大変楽しめるアニメですので機会がありましたら是非ご覧になるのをオススメします。
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