アンチヒーローとしての冒険者

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 SNEサイトでSW2.0のスタッフインタビューが公開。読んでてなかなか面白かったのでブックマーク。

●SW2.0スタッフインタビュー
http://www.groupsne.co.jp/user/interview/2008/09/02.html

 

 SW2.0は実はまだ一度も遊んだことがないのですが、読んでいて面白いのが世界観、の行間。
 80年代の寵児としてきて生まれてきた旧作SWと私がであったのは90年代でしたが、あの当時の空気感を知ってる人間としては、SWが遂げた遍歴そのものが面白いのでした。あー、こう変わていくのかー、って。

 2.0では冒険者=志願兵で、社会的地位が認められているのが一番の違いですかね。

 旧SWでは実際のシナリオやリプレイのPCは理不尽な扱いはそうそうされませんが、小説になると一転して冒険者の扱いがひどいんですよね。社会的にすごいネガティブな存在として受け取られてて、帰り際に戸口に塩撒かれるような。

 大人視点からみたら、もし自分の子供が「オレ、中学でたら冒険者になる」なんて言い出したら泣いて止めるに違いない、というのが、SW当時の冒険者の立場でした。
 これは結構初期に出た小説からそういう扱いだったように思います。

 アレクラスト世界での冒険者と言う業種は、物語の上でヒーローにだったとしても世間様にすれば単なるアウトローであって、小説家が煮詰めれば煮詰めるほどそうせざるをえなかった、あるいはそういう側面もあることを明記するレギュレーションがあったのだろう、と今なら判りますが、当時、そういったネガティブイメージが公式からチラッチラッと流されてくるのが子供心に衝撃でした。

  それらに加えて、ゴブリン等のモンスターに虐殺・略奪の限りを繰り返したPLとして、スチャラカ冒険隊の後半エピで「君たちが今まで撲殺してきたモンスターにも実は人格があるんだよね(しかも和解が可能)」というトラウマを烙印された身としては、もう冒険者PCを真人間として認識するのは無理な訳ですが、SW2.0ではこれをどうにか真人間に戻してあげよう、と言う涙ぐましい努力が払われている ...気がします。

 最近の作品では「いかに敵を作るか」というのが一大問題だそうですが、SW2.0では倒すべきモンスターと人間の関係を、加害者と被害者の関係まで落とし込んでクリア。
 人間対蛮族というどこかで見たような二極構造を復活させた上で、モンスターをあえて人間よりも優位に置いたことで、ゴブリンを疑問なく撲殺できる環境を整えているというのは凄い世界観だなと素直に思います。

 

 この「蛮族」というフレーズですが、どうにも妄想につぐ妄想が浮かんでどうしても生理的に受け付けなかったのが、ふと、これまで人間として見ていけなかったモンスターを、(スチャラカ同様に)人間と同一視させるのも意図として含まれてるのではないか? と気づいて見方が逆転しました。

 SWリプレイが出始めた当時、TRPGの宣伝文句としてよく言われていたのが、「コンピューターRPGでは出来ないことがTRPGではできる」でした。
 では、PLが本当に選択肢以外の行動が可能ならば、倒すべきモンスターに対して、たとえば戦闘を避け、交渉し、はては和解することも出来てしまう?

 オフィシャルが自ら矛盾を突いてみせた、あるいは自由裁量を見せ付けたのがスチャラカ冒険隊で、今にしてみればものすごい早期に問題提起をしてるんですが、他のシステムではモンスターを絶対悪の鋳型に落とし込む解決策が主流になる中、この問題に20年かけてたどり着いたのが、SW2.0の必ずしも絶対悪ではない蛮族という観点ではないのかと。
 それは同時に冒険者に善悪を課さず、ヒーローであることから救済する措置でもある気がします。

 

 ただ、舞台上にいるのが人間と蛮族だけだとしたら、旧来の「敵=モンスター」という構図がすぐにでも復活してきそうな勢いですが、そこで旨いことワンクッションいれてるんですねー。
 タビットとルーンフォークです。

 ビジュアルに一瞬、許しがたいものを覚えましたが、この胡散臭い二大種族の投入で、従来の人間・モンスターの境界線がいい感じにぼやけてるんじゃないですかね。
 それに加えて今回のヒエラルキーでは、コボルトという愛玩動物がゴブリンのさらに下にいるというのが非常にあざとい。あざといなあ。誰だ考えたのは。
 絶対こんなのが視界にいたらシリアスになりませんよ。入れた人、えらーいっ。

 そしてよくよく考えると、タビットもコボルトもおそらくは、80年代SWでSNEがテキストは指輪物語、ビジュアルはサンリオの流れを汲む邦訳ファンタジーの世界観を解体し、リプロデュースして作り上げようとした硬派な和製ファンタジーの世界観からオミットされたに違いない存在です。

 しかし、大鉈を振るわれても彼らは生きていたわけですよ。21世紀になって、どこに隠れていたもののかのうのうと現れたわけですよ、そう、言うなればエクタクロームさんが!

 結局、ファンタジーとしてはかなり、物凄いアーリーな姿かたちに回帰してるんですよね、SW2.0って。

SW2.0