読書履歴
[Works of ゲド戦記―Digital Artwork|STUDIO GHIBLI]
地上波放送で1度だけ見ましたゲド戦記。正直、内容は微妙でしたが、過去の宮崎作品にはないビビッドな色彩、恐らく3Dを多様しているであろう背景に目をひきつけられました。いつも覗いているこちらのサイトで紹介されていたので購入してみました。
内容はファンブックではなくアニメ教本。前半はキャラクター紹介やセル画の掲載など、後半はほとんど3Dのメイキング。ジブリが使ってるのはXSI(やっぱりね)ですが、3D全般で活かせるテクニックではないでしょうか。最近のアニメで3Dは珍しくなくなりましたが、実際にどのように使われているのかがわかって興味深かったです。
[QuickStart!! くいっくすたーと 1] 安達洋介
安達さんがとうとう単行本を出しました。
あの蟲使い大好きっ子だった彼が、パンツァーリッター大好きっ子だった彼が(以下略)気がつけば立派な漫画作家さんに! そして、私は彼の初単行本が出てから何ヶ月遅れで宣伝しているのかと!
ええとほら、私が褒める人は大概出世コースから綺麗な放物線を描いて外れていくので、ちょっとクールダウン期間が必要だったんですよ奥さん...!
現物をちゃんとリアル書店で手に入れるって目標もあったからなんですけど。書店売り場ではもちろん平積み、店員さんのお手製フリップもついてて、愛され感が漂ってました。いいなあ。愛されてるなあ。
TRPG4コマというありそうでなかった新境地を開拓した一冊。内容は帯の通り、TRPGモノなら「あるある」と肯いてしまいそうなシチュ、TRPGから半ばリタイアしている人間は元気をもらえました。いい漫画です。
「27歳は若い部類」だという先生のご意見は正しいですね。
[マップス 愛蔵版 1] 長谷川 裕一
同時期、同じ掲載誌に載っていたなあばすぶれいくだうんに一時期ハマっていたものの、連載中は結局お目にかかることはなかったマップス。
最近はネクストシートを読み始めたのもあって、古本屋を覗けば探してたのがこれが一向に見当たらない。それだけ大事にファンは取っておいてるんでしょうね。
今現在は絵柄はもうどうでもよくて面白いストーリーが読めればいいやと思ってるんですけど、当時は画風の好き嫌いが極端な頃で、漫画を選ぶのもまず絵ありきでした。
でも自分が手に取った、画風が綺麗な漫画はおおむねストーリーが薄味だったりする。自分が好きな(と思い込んでいる)作品なのに何か物足りなさを感じていた時期で、ああなんでこの時に自分はマップスを読んでなかったんだろうと思いました。
連載時に読んでれば、人生変わっただろうな。勿体ないことしたな。
[フェノロサと魔女の町] 久我 なつみ
とうとうあのフェノロサ先生がラノベの主人公に! なった訳ではなくて、ちゃんとした伝記です。ええ、ああ、すみません。
東洋の帝に認められたアメリカ人として時の人となりながら、日本人以外からは忘れ去られてしまったフェノロサ。
その上、故郷セーラムの図書館・博物館にすら、その痕跡が何ら残っていないことを不審に思った作者が、一体何故フェノロサの存在がセーラムから消されてしまったのか、フェノロサの生い立ちと町の歴史を皮切りに迫っていくドキュメンタリー。
本書のテーマとして、フェノロサはあくまで不遇のかわいそうな人、でなければならないようなんですが、挿話の1つ1つを読むに、まさしく因果応報、殴ったら殴り返される、それなりの人生を送ったように思われます。
アメリカ帰国後のフェノロサはスキャンダルにまみれます。
その筆頭が、かつて駆け落ち同然で結婚、日本招聘にも同行、その社交的な性格を周囲からも愛されていた前妻(美人)との離婚。これは後妻との再婚の為で、この事件を契機に、フェノロサは仕事上での人間関係や信頼も失っていったようです。
さらには、日本ブームの仕掛け人としてのボストンでのポジションも、教え子であった岡倉天心に取って代わられてしまいますが、この当時のフェノロサや天心の立ち位置は、後のギルデットエイジに、アメリカでありあまる富を築いた新興富裕層の名代として、西洋絵画の買い付けに奔走した画商たちを思わせるものがあります。
ちなみに西洋のいわゆる「間違ってる日本観」を作り上げたのはこの二人だそうで、こうなるともう日本文化の理解者・擁護者という雰囲気はしません。日本文化とはあくまで仕事上のお付き合い、というところでしょうか。
なんというか会い通じるものがあるこの二人、正直どっちも胡散臭いです。
さて、フェノロサの性格をうかがわせるエピソードとして、こんな話が。
日本滞在中のフェノロサは錦絵や襖絵を高く評価していたものの、世相や庶民の生活を題材とした浮世絵は、彼の高尚なオリエンタリズムとは相容れませんでした。
浮世絵は撲滅すべき卑俗・通俗的なもの、として徹底的にこき下ろしていたフェノロサですが、アメリカ帰国後に失職し、裕福な暮らしから一転、貧乏暮らしのどん底に至ると、「生まれてはじめて浮世絵の良さがわかった」と知人に洩らしたそうです。
いいところのボンボンだったんですね。
[回帰祭] 小林 めぐみ
この人の本を読んでいて幸せになれるのかといえば、結局あんまり幸せになれないような... どこかシコリが残る読後感なのですが好きな作家さんです。
確かドラゴンマガジン誌上に掲載されていたねこのめシリーズで、なんかこうグサッとやられちゃったんですよねー。ツボではなくて、グサですグサ。刺さるんです。
地球から遠く離れた星に墜落した移民船ダナルー内部に展開する、閉鎖環境モノでジュブナイル小説。
人間はもはや妊娠・出産を行わず、機械から生まれて里親によって育てられるという慣行が徹底している時代。しかし、墜落によりプログラムが壊れたダナルーでの男女比はなんと9:1。これで問題が起こらないわけはなく、苦肉の策として考えられたのが地球への帰還事業。成人までにパートナーを得られなかった男児は、帰還船にのって地球へと帰らねばならない。
タイムリミットが迫る中での恋物語、なわけですが、小林作品らしく喋る動物しかもウナギが登場したり、少年少女とは別に大人の恋も進行中。喋る動物と同様に、小林作品の底通する破滅にむかってまっしぐらな大人の恋心のほうが、ライカ少年の初恋を押しのけて、今作ではよりいっそう切れ味を増している気がします。



