読書履歴
野口久光シネマ・グラフィックス
映画配給会社に勤めていた野口久光の手になる映画ポスターだけを集めたという、やや特異な画集。戦前の1930年代から戦後まで、はじめはドイツ・フランス映画だけだったのが戦後はアメリカ映画ばかりになったり、その時代時代の空気感や、1枚のポスターから様々なことが伝わってきて楽しめました。
先日見たTV番組の講釈では、はじめはただの会社員として入社してきたのに、絵心があるということでいつの間にかポスター係にされてしまい、気がつくとものすごい量のポスターをかいてた──という話なんですけど、この本を読むと芸大図案科出身とありました。絵心はもちろん、レタリングはすべて手書き。PCでは再現できないだろう手仕事です。
同居している祖母に見せたら「アー見た見た」「あらすじは覚えてないけど見た」と言って喜んでいたので、ご年配の方のプレゼントにいいかもしれません。
[ナポレオン~覇道進撃 1] 長谷川 哲也
ナポレオンが終わっちゃったーと思ってたら、新刊が出てました。アルェー。
なにやら、たとえ人気シリーズでもあんまり巻数が伸びると、新規顧客がつきにくいんだそうで、まあここらへんから読んでもお話に入れますよ、というところで一区切りをいれたようです。ふーん。
エジプトからの帰還後、フランス本国でクーデターを成功させたナポレオンは最高司令官から第一執政に。とはいえ、のっけから「ウサギ狩りだ!」と称してウサギを解き放った室内で銃撃戦を繰り広げて政敵を血祭りにしたり、やってることは相変わらずのヤンキーぶりなので旧作からのファンも安心です。
一方で、ナポレオンがここぞという場面で「あんた男だな」と殺し文句を口するようになったり、(一瞬)美談に思える(けど結局オチがひどい)エピソードを随所にちりばめるなど、新規読者に対する心遣いが伺えます。おかげで、あのマッセナさんすら一瞬いい大人に見えるマジック。マッセナに助けられたタルボ少年も次の巻あたりでいい変態になってることでしょう。ええ。この漫画変態しかいないんです。
このシリーズ読めば読むほど、自分の中の美化されたナポレオン像というのがガラガラと音を立てて崩れていくわけですが、作者がじゃあすごい勢いでとっぴなことを書いてるのかといえば大体史実に基づいているという事実が、確実に崩壊速度を速めます。うん、この手の人が人格者な訳ないよね。
そういえばナポレオンと一緒に軍靴のバルツァーというこれも架空軍事モノ漫画を買ってしまったんですけど、…えー、もしファンの方がいらっしゃいましたら、ナポレオンとはくれぐれも一緒に読まないことをオススメします。
ルイジ・コラーニ 第4集
ルイジ・コラーニだよっていわれても、現在20~30代前半の世代には一体何のことか判らない人が大半だと思いますが、えー、有機的なプロダクトデザイナーとして有名な人のようです。ようですっていうのは、やっぱり私も判らないから。
とはいえ80年代生まれなら、確実にこの人のデザインしたもの、あるいは彼に憧れたデザイナーによる一連のスタイルの大量生産品を確実に目にしてるはずです。
今でも見られるものとすれば80年代に作られたSF系アニメ。
それもメインのデザインではなく、たとえば場面になんとなく出てくるインテリアや一瞬しか出てこないメカやロボットに、ルイジ・コラーニの影響が垣間見れることもしばしばです。
今回の作品集は前回から数十年ぶりの刊行になっており、かなり包括的な内容のようです。でも20~30年前の作品を今見ても新鮮さが薄れないのは、こういうのがなるほどデザイナーというのだなとしみじみ思いました。
空の都の神々は N・K・ジェミシン
創世神話の3神の内、闇と黄昏の2神は打ち滅ぼされ、勝者である光と秩序の神イテンパスが権威を与えたアラメリ一族が、空中都市スカイから君臨する十万王国が舞台の異世界ファンタジー。
建前上、アラメリ一族は各王国間の調停者という立場をとりつつも、イテンパスに与えられた権能により絶対支配者として君臨している。それはイテンパスに破られた2神の内、闇の神ナハドと滅ぼされた黄昏の神エネファとの間に生まれた神々。神々は奴隷として、人間の体に押し込められ、アラメリへの服従を強いられていた。
ある日辺境の王国の首長だった少女イェイナが、アラメリの召集を受けて空中都市へ参内に訪れるのだが、そこで思いがけずアラメリの後継者候補として指名されてしまう、…というのが出だし。
親族はとにかく敵対的だし未開人扱いされるしのっけからスカイの独特のルールに振り回されるヒロインですが、何故かスカイ在住の神々に気に入られてハーレム状態。闇の神はチョッピリ危険なイケメェェン。ショタ神もいるあたりさすが作者わかってる。
くわえて、ヒロインの一人称のおかげでますます女性向けエロゲーっぽくなってしまうのですが、エロゲー臭を抜けば正統派ファンタジーだと思います。
異世界ファンタジーということで、1つ1つ、その世界ならではのルールがつまびらかにされていく過程が楽しいです。劇中はほとんどが空中都市スカイがその舞台になるのですが、十万王国という世界の広がりが感じられ1冊ではもったいない感じさえします。
John Constantine: Hellblazer - City of Demons
邦題コンスタンティンで映画化もされたヘルブレイザーのミニシリーズの内の1冊。
このシリーズも90年代には知ってましたけど、実際手に取るのは邦訳サンドマンのクロスオーバー以来。今回のミニシリーズを担当しているSean Murphyの絵柄目当てで購入。deviantArtで見て一目ぼれしました。
ミニシリーズの書き手によって、主人公コンスタンティンの顔が結構激変するんですが、今回はまるまる1冊彼の絵柄なので安心。
コンスタンティン、見てて完璧ダメ親父なんですけど、やっぱり怒らせると非常に怖い性格のようです。ドリームとつるんだ時はヘタレだと思ってたんだけど、そうでもないんだなー。
最近はパースも大体検討がつくようになりました(ありがとうイラスタ、ありがとうパース定規)。
さて、次に気になりだしたのが建物そのものです。
これまではインターネット上の写真を目分量で測って描くだけで満足していましたが、ある時、これまで何気なく見ていたお城の門や入口のアーチにも、形によってセグメンタルアーチやホースシューアーチといった名前がついていることを知りました。名前があるからには、なにやら一定の法則があるようです。
ここにきて、自分の書いている窓やアーチは「正しい」のだろうかと不安になりました。
ここ数年、パース関係の本は何冊も目を通しましたが、建築パース・漫画用パースの参考書で、建築自体の包括的な知識を教えてくれる本というのは、散見したところありませんでした。別の教科書が必要なようです。
そこで漠然と調べてみたところ、古典的な建築物はその土地や時代ごとの様式によって特定の比率で設計されていたり、また幾何学(きかがく)というものが応用されているのがわかりました。キカガクとはよく聞く謎のフレーズですが、どうやらキカガクとはCADもないイラレもない状況下、アナログ作業でかつ一定のクオリティで図形を書き出す、古来からのテクニックのようです。
創元社が出しているアルケミスト双書で「これは!」という、幾何学の本がありましたのでご紹介します。
児童書です。なんと児童書です。
みならいクノール(講談社わくわくライブラリー)著者のたざわりいこ様から、当サイトの鉛筆風ブラシご利用のご連絡いただきました。
ご連絡いただいてからだいぶ時間がたってしまいましたが、近所の本屋に注文いれてゲットいたしましたー!
自分が調整したブラシとはいえ、人によってまったく違った使い方をしてるんだなーとしみじみ。
まったく自分とは無縁の方がこうやって素材を使ってくれる、インターネットってすごいんだなと改めて思った次第です。
時々エントリにコメントを頂きますが、実際どういう形で使われているかと知る機会は稀なので、こうやって連絡いただけてとても嬉しかったです! たざわ様ありがとうございました!
[The Book of Schuiten] Francois Schuiten
バンドデシネ作家なんですが、どちらかといえばパース画集、いやむしろパースの鬼といった趣のシュイッテンさんイラスト集。
描かれているのは主に、ギルデッドエイジを思わせる摩天楼が乱立する、まさにレトロフューチャーな架空の都市。それでいてそれが絵空事に思えない、理に適った造形とディティールのこの存在感はなんでしょう。これなんてパース地獄。これ何時間かかるの下書きだけで。
パースもそうなんですが、それを彩るヨーロッパ的な色彩感覚も新鮮。新聞広告に挟まってるマンションのパースなんか見ると、もう空々しい色で塗りたくられちゃったものばかりで、パースは正しいかもしれないけど必ずしも好きな絵じゃないんですよね。






