3月下旬に読んだ本
[The Book of Schuiten] Francois Schuiten
バンドデシネ作家なんですが、どちらかといえばパース画集、いやむしろパースの鬼といった趣のシュイッテンさんイラスト集。
描かれているのは主に、ギルデッドエイジを思わせる摩天楼が乱立する、まさにレトロフューチャーな架空の都市。それでいてそれが絵空事に思えない、理に適った造形とディティールのこの存在感はなんでしょう。これなんてパース地獄。これ何時間かかるの下書きだけで。
パースもそうなんですが、それを彩るヨーロッパ的な色彩感覚も新鮮。新聞広告に挟まってるマンションのパースなんか見ると、もう空々しい色で塗りたくられちゃったものばかりで、パースは正しいかもしれないけど必ずしも好きな絵じゃないんですよね。
[天冥の標 2 救世群] 小川 一水
前作の植民惑星メニー・メニー・シープから一転、舞台は未知の疫病に襲われる近現代の地球に。
感染者の多くを死に至らしめる新たな疫病のパンデミックが、現場の医師や感染者、世界各国を巻き込んで新たなパラダイムになっていく過程の物語で、この疫病・冥王斑がその後のメニー・メニー・シープを作り上げた遠因となっているのではないかと想像が及びますが、伏せられた手札がオープンになるどころかさらに積み上がって、ますます謎だらけ! という印象です。
昨年読んだ天涯の砦やレーズフェント興亡記もそうですが、内容が絵空事にならないようになるべくリアルに、ものすごい勢いで資料を調べてから本を書く作家さんで、どの作品も読んでいて「なんでも文章化したい!」「書いてみたい!」というストレートな欲望を感じます。
今巻はパンデミックという実在する現象を取り扱っているだけに、内容はなかなかハードで、読んでいて「実際にありえそう」な展開に少々しんどい巻でした。
しんどいと言えば、他作品を読んでいた時にもちょっとひっかかるものがあったんですけど、出てくるヒロインが明らかに女思考じゃなくて、男が想像しうる女像なんだなと今回はっきりと認識。
ヒロインの内省に「いや、そんな女いないから!」と違和感を感じるたびに我に返って、物語にのめりこめなかったのが残念でした。深くて暗い川なのよね。
[マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮] 冲方 丁
冲方丁の出世作というフレコミで、書店に平積みされていたのを読もうか読むまいかと思っている間に、気がつくと出版から7年たってました。まだてっきり2・3年前の本だとばかり思っていたんですが、月日の流れが恐ろしい。
書店でひさしぶりに平積みされてるのを見たら祝アニメ化!という帯がついていて、反射的に「自分はこのアニメを見たくないだろうな」と思って、シリーズ3冊をガシッと掴んでレジに直行。見たくないから小説を買うというのも妙な心理ですが。
勢い、土日にかけてモリモリ全部読んでしまいました。楽しかったー。
書かれた当時は子供の売春や児童虐待にまだリアリティのなかった時期で、主人公の少女バロットの生い立ちが出版社サイドに理解されなかったそうで、発売当時は相当ショッキングな内容だったんだろうなと。
一方で、主人公バロットや彼女を追い詰めるボイルドが、ただ一匹のネズミによって立ち直るキッカケを貰う流れは、実感として判る気が。
スクランブルの次に書かれた微睡みのセフィロトのほうを先に読んでいたので、スクランブル読後に再読してみました。
こちらの主人公は中年男性の捜査官パットですが、明らかにボイルドにそっくりだったり、結構共通項があって楽しめました。
スクランブルが大作三部作映画ならこちらは火サス(2時間枠)、バロットとボイルドの役者さんがまた違う役柄で再共演してるという趣で、短い話なんですけどボイルドさんが好きな人にはお薦めです。



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