3月上旬に読んだ本
ブログをつけるのをちょっとさぼっている間に、うむ、1ヶ月前何を読んでいたのかまったく記憶がないという恐ろしい事態に。
[微睡みのセフィロト] 冲方 丁
フォースと呼ばれる能力者と非能力者との戦争を契機に、人々が多種多様な超能力に目覚め始めたアフターマスな世界が舞台。超能力者が引き起こしたとおぼしい異様な事件を、人生に疲れきったベテラン刑事と稀有な超能力者である少女が追うというのが簡単なアラスジ。身長差カップルに飢えているそこのあなたにオススメ。
沖方作品は噂のマルドゥックを読もうかどうしようか躊躇っている一方、オイレンシュピーゲルを試しに読んで、感情と暴力が横溢している割にはスラスラ軽快に読める文章で、あっさり読み終わってしまった後からジワジワ来る、というのが印象として残ってます。これも短い話なんですが後からジワジワ来ました。
ラノベといわずミステリでも美術書でも参考書でも、結局どの分野でもそうなんですが、昔はどんな文章でもガツガツ噛み砕いて読んでいたのが、ある時点から段々どういった文章が自分の好みなのか実感として判ってきた頃から、読み直すのに耐える端正な文章を書く作家さんにめぐり合えるのって、読書量があってもなくても、そうそうない機会なんですよね。そんなに多作の作家さんじゃないし、今後も惜しみ惜しみ読もうと思います。
[風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記] 小川 一水
動乱の中世ヨーロッパ。封建領主の息子として生まれながら、身分や生まれにも縛られることのなく人々が自由に交流できるという都市に憧れを持つルドガーは、弟リュシアンと結託し、実家の財産である荘園を合法的に独立させて都市としたのを手初めに、鄙びた寒村でしかなかったレーズフェントを一大交易拠点にならしめるべく、ローマ時代から泉に住まうという尋常のものではない少女レーズや住民たちの力を借りながら、1つづつ困難を乗り越え、レーズフェントを発展させていく。
単にレーズフェントがニョキニョキ発展していくだけの話だと中世版シムシティーになっちゃうんですが、ある種のファンタジーである(とは言いかねるけれど)レーズの存在によって、重すぎずも軽すぎずもしないお話になっています。
読んでいて面白いのが美少女レーズがヒロインではない点。ルドガーに思いを寄せる主君の姫君がヒロインを勤めて役割を分散しています。確かにこれでレーズがヒロインだったら俄然生臭くなっちゃうところです。
ルドガーとレーズがさばけた関係を築く一方、まだまだ未熟な10代の弟リュシアンの場合には、レーズの分身と村娘の間で板ばさみになってしまったりします。「時砂の王」「天冥の標」でもあった、人外キャラをまじえての三角関係は作者が好きなパターンなんでしょうか。
[将国のアルタイル(6)] カトウ コトノ
段々盛り上がってきました! 前巻で反トルキエに傾いた属国・四将国を内部から転覆させるべく、将軍会議からの密命を受け取った(元)少年将軍マフムート。
各国の内情を探りつつ、他の将国とは違って唯一本意ではない裏切りを強要されているクルチュのスルタンの言質を取り付けるのに成功するものの、各人の思惑が入り乱れて状況は二転三転、密命を受け取った当初からすでに捨て駒扱いでしたが、このままではザガノス将軍の思惑通りにまさしく鉄砲玉に。
ここまであしざまに扱われる主人公も珍しいですが、マフ君は難局を乗り越え、無事将軍職に返り咲いて発言権を取り戻せるのでしょうか。はたして、ザガノス将軍から一本とれるのはいつの日のことやら。
マフ君が思うがままにならない状況に葛藤するのはいつもの事なのでおいといて、お話は洋梨の将姫アイシェとその叔父の二人に軸を移します。立場上結婚は出来ない二人、いわゆる戦火のロマンス。
マフムートの将軍職追放からこれまで仲間集めの定石展開が続きましたが、各キャラの背景を描いてもあくまでお話の中心はマフ君でした。まあ、これまで世情に関して、読者とマフムート・ベイの知識量がほぼ一致しながら展開してきたからには必要な処置だった訳で、諸国行脚の旅からの帰還と彼の自信回復と共にやっと読者視点が彼から外れ、枷を外れた物語がいよいよ伸び伸びと動き始めたという印象です。



コメントする