10月上旬に読んだ本
[ミストボーン―霧の落とし子〈3〉白き海の踊り手] ブランドン・サンダースン
終の帝国に千年にわたって君臨し、不老不死の神とも崇められる支配王の圧制を覆そうとする、盗賊たちの物語もとうとう完結です。玉石混交の邦訳ファンタジーではひさしぶりのヒット。
以前、ジャンプ漫画のようなファンタジー小説と紹介しましたが、これまでの伏線の回収や霧の申し子同士の応酬など、クライマックスに向けて、面白さとテンションがガーッと上がっていくのはまさに漫画的。
解説によると作者は「オーシャンズ11みたいなファンタジー小説が書きたかった」そうで、盗賊団が各方面のプロフェッショナルの集団というのは如何にもですが、徐々に物語のフォーカスは盗賊団から、この世界の頂点に立つ存在である霧の申し子となった、しかし迷える少女ヴィンに次第に移っていきます。
陰惨で残酷な因習に彩られた世界で、貴族とスカーとの混血、兄の裏切りと言う過酷な生い立ちから人を信じられなくなったヴィンが、やがて盗賊団の仲間たちと打ち解け、恋愛をし、同時に霧の申し子として卓越した才能を開花させていき、最後には無我夢中で、誰にもなしとげられなかったことをついに実現する。
でも、結局このお話は、ヴィンが気負わず普通に笑えるようになるまでの、成長物語なんですよね。
これでどうやら第一部完、というところで、最後にまた新しい伏線が張られており、続きは是非にも読みたいところです。
[アルカサル-王城-外伝 1] 青池 保子
先年完結したアルカサルは、中世スペインにあったカスティリア王国の国王ドン・ペドロの波乱の人生をつづる、少女マンガにしてはハードかつ精緻なディティールのお話でした。
文庫本の解説では、ドン・ペドロの下着姿が専門家から「日本国内で一体どうやって中世の男性用下着の資料を集めえたのか!」と妙な方向から賞賛されていたり、作者自身もスペイン旅行記での強盗にあった顛末を披露するなど、並々ならぬ努力が伺える作品でしたが、外伝はその集大成という雰囲気。
ドン・ペドロの王女が実はイギリス王家に嫁いだその後の顛末を描いたエピソードは、おおドン・ペドロはチョーサーと同時代の人間だったのか、イギリスとスペインはここでリンクしてくるのかと歴史好きには滾るものが。
スペインとイギリスって始終戦争しているイメージがあるんですけど、こうやって着々と因縁は築かれていったのかと思うと感慨深いものがあります。また、少女漫画だとスペインはよく悪役にされてしまうので、スペイン視点での歴史漫画というのも珍しいですね。
あ、そうそう、ナバーラの鷹こと修道士ファルコも、ひさしぶりにドン・ペドロと再開を果たして、やっぱり懺悔の山を造山する羽目に陥っています。
[時砂の王] 小川 一水
天冥シリーズの続巻は来春発行だそうで、「今すぐ小川作品を読まないとマストダイ」な禁断症状に陥ったので、発作的に購入。
未来から過去に襲来する謎の敵を撃退するべく、同じく未来から過去へと遡行するアンドロイドたちのお話。敵が有利になるたび、過去に戻って体勢を立て直す戦略を繰り返した結果、アンドロイドOがたどりついたのは女王卑弥呼が支配する邪馬台国で... というのが序盤のお話。
よくあるタイムパラドックス云々はなく、ある時点で本来あったことと違うことが起きた場合は時間のノード分岐が発生、本来あった未来と同時に派生未来も存在するという、時間のツリー構造の概念が面白かったです。なお人類滅ぼされちゃったら彼らがやって来た未来も自動消滅。
ちなみに、天冥の標に登場したラゴスもモテモテでしたが、Oも卑弥呼から武人から全方位モテモテですよ。小川作品アンドロイドは必ずモテモテなんでしょうか。



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