09年梅雨に読んだ本
専門書以外は、ハヤカワ文庫しか読んでない気がする梅雨シーズンでした。
[アンブロークンアロー ― 戦闘妖精・雪風] 神林長平
ここ最近、比較的コンスタントに出ている気がする雪風3作目。
前作グッドラックは、10年ぐらい待たされませんでしたっけねー。
って、グッドラックの発売日を確認したら今回も結構待たされてました。いやー、実は待たされてましたよおかしいなー。
読みはじめるとあんまり時差を感じなかったんですけど、あー、アニメ(黒歴史)があったからか。
ライトジーン文庫版で、「いずれはより狡猾なものを書きたい」という旨のあとがきがあったように思いますが、確かにより狡猾になっている? のかなあ。
読後冷静に考えると、結構似てるパターンの話がかなりあると思うんですけど、読んでる最中はとにかく「今、神林長平を読んでる! しかも新作! スゲー!」ということそのものが至福すぎて、1ファンとしてはただただ嬉しくて、何も考えてられないんですよね。
[イスタンブールの毒蛇] ジェイソン・グッドウィン
斜陽のオスマントルコの首都イスタンブール、白人宦官ヤシムを主人公にしたシリーズ第二作目。
前回は、イスタンブール市内の描写に食われてた感のあるヤシムでしたが、今回はちゃんとキャラが立っていましたね。あるいは私の趣味が変わっただけかもしれませんが、2作目にしてヤシムも筆致もよりこなれた印象を持ちました。前回主役級の個性を発揮していたポーランド大使(この時点でポーランドはありません)パレフスキーと、ハレムの主・女后(ヴァリデ)にも負けてないような気がします。
時系列は前作から数年がすぎ、スルタン・マフムート2世が崩御せんとしている最中のエピソード。史実どおりにいけば、国策として西洋文化と近代化を受け入れていく時代に移り変わっていくようで、おそらくオスマントルコが輝いた最後の時代なんでしょう。
[ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国 ] ブランドン サンダースン
1000年の間君臨しつづける支配王を頂点に、貴族層の下には酷使されるスカーと呼ばれる民からなる、昼は灰色の降灰、夜は霧に国土を包まれる終(つい)の帝国。というもうベタベタな終末観が漂う、いや海外ファンタジーはこうじゃなくちゃねというドロドロの舞台設定に、合金使いという魔法のような、しかし使用ルールが明確に決められているという、最近のジャンプ漫画チックな能力者たちが登場。
スカーの盗賊であり、盗賊団の中でも日々ドメスティックバイオレンスに晒されていた悲惨な少女ヴィンが、彼女が潜在的に持っていた合金使いの能力に目をつけた伝説的な盗賊ケルシャーによって手ほどきを受け、あらゆる金属を使いこなす霧の申し子として成長する一方で、猜疑心まみれで頑なだった少女が自分らしさを取り戻していくまさに王道の成長物語。
8月に2巻目もリリースされ、ガンガンと面白くなってますよー。
[ドクトル・マブゼ] ノルベルト・ジャック
ハガレン劇場版で、フリッツ・ラングが名乗る偽名がドクトル・マブゼで、以来なんとなく気になってました。
ピカレスクロマンというと悪党であっても魅力的な人物が主役、というのがお決まりですが、ドクトル・マブゼはちょっと信用できないタイプ。間違っても部下にはなりたくありません。
終盤に「実はマブゼの使うトリックは心理学+催眠術だったのだ!」と明かされるものの、現代の読者としてはハナからなんとなーく判ってるわけでダメ押し感一杯だったり、その他、映画・漫画でのお約束展開が目白押しで出てきます。今や色あせてしまったお約束ネタですが、その重厚な語り口を見るに、もしかしてお約束ネタの原典なのかしらん。
また、ミステリ黄金期の英米作家の作品でドイツ人が登場するのもさほど珍しくはないものの、実際にドイツ人作家がドイツを舞台に書いている為、戦間期のドイツの閉塞感やえもいわれぬ生々しさがヒシヒシと押し寄せてきます。ノルベルトの書くドイツと、今の日本はどことなく似てる気もしました。




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