2月上旬に呼んだ本

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[フェノロサと魔女の町] 久我 なつみ

フェノロサと魔女の町

 とうとうあのフェノロサ先生がラノベの主人公に! なった訳ではなくて、ちゃんとした伝記です。ええ、ああ、すみません。

 東洋の帝に認められたアメリカ人として時の人となりながら、日本人以外からは忘れ去られてしまったフェノロサ。
 その上、故郷セーラムの図書館・博物館にすら、その痕跡が何ら残っていないことを不審に思った作者が、一体何故フェノロサの存在がセーラムから消されてしまったのか、フェノロサの生い立ちと町の歴史を皮切りに迫っていくドキュメンタリー。

 本書のテーマとして、フェノロサはあくまで不遇のかわいそうな人、でなければならないようなんですが、挿話の1つ1つを読むに、まさしく因果応報、殴ったら殴り返される、それなりの人生を送ったように思われます。

 アメリカ帰国後のフェノロサはスキャンダルにまみれます。
 その筆頭が、かつて駆け落ち同然で結婚、日本招聘にも同行、その社交的な性格を周囲からも愛されていた前妻(美人)との離婚。これは後妻との再婚の為で、この事件を契機に、フェノロサは仕事上での人間関係や信頼も失っていったようです。

 さらには、日本ブームの仕掛け人としてのボストンでのポジションも、教え子であった岡倉天心に取って代わられてしまいますが、この当時のフェノロサや天心の立ち位置は、後のギルデットエイジに、アメリカでありあまる富を築いた新興富裕層の名代として、西洋絵画の買い付けに奔走した画商たちを思わせるものがあります。

 ちなみに西洋のいわゆる「間違ってる日本観」を作り上げたのはこの二人だそうで、こうなるともう日本文化の理解者・擁護者という雰囲気はしません。日本文化とはあくまで仕事上のお付き合い、というところでしょうか。
 なんというか会い通じるものがあるこの二人、正直どっちも胡散臭いです。

 さて、フェノロサの性格をうかがわせるエピソードとして、こんな話が。

 日本滞在中のフェノロサは錦絵や襖絵を高く評価していたものの、世相や庶民の生活を題材とした浮世絵は、彼の高尚なオリエンタリズムとは相容れませんでした。
 浮世絵は撲滅すべき卑俗・通俗的なもの、として徹底的にこき下ろしていたフェノロサですが、アメリカ帰国後に失職し、裕福な暮らしから一転、貧乏暮らしのどん底に至ると、「生まれてはじめて浮世絵の良さがわかった」と知人に洩らしたそうです。
 いいところのボンボンだったんですね。

[彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス] ジャック・キャンベル

彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス (ハヤカワ文庫SF)

 人工知能など萌え要素は皆無! 巡航速度は亜光速! 主力兵器はブドウ弾! そんな豪快な艦隊戦が展開するミリタリーSF。

 主人公は開戦当時、乗艦が破壊され、脱出ポッドの冷凍睡眠で100年眠り続けていた軍人ギアリーさん。
 友軍・アライアンス艦隊に運よく脱出ポッドが回収され、100年ぶりに復活を遂げたものの、とっくに終わってると思われた戦争はまだ続いてるし、戦死扱いで大佐に昇級、しかもいいように教本の中で神格化されているという始末。

 そこに畳みかけて敵地の最深部に侵攻した艦隊は敵の罠により半壊、艦隊司令部は全員即死亡、定石どおり艦隊の指揮を託されてしまいました。
 残された士官たちはみんな自分に萌えているか反発しているかのほぼ二択。敵地の真っ只中、ギアリーさんは艦隊を無事に地球に送り届けることができるのでしょうか。以下続巻。

 ギアリーさんの悲惨な状況も十分に楽しいのですが、読んでいて面白いのが艦隊戦のいわばルール部分。

 艦隊は光の速度で時差が発生するまで広がり、しかも時差を解消する通信技術が開発されてないという、不便さをあえて残した世界観設定になっています。これがなかなかどうして実にシビアな味付けじゃございませんか。
 たとえば光の速度で1分=1光分離れた位置の戦艦に命令を下すのに1分、さらに戦艦からの返答が届くのに1分かかっちゃうわけです。
 通信手段同様、観測手段も目視が最速で、40光分離れた地点で起こっている戦闘の結果がわかるのは40分後という具合。たとえ命令を発しても届くのは結局40分後ですから、その場その場で指示を出すのは不可能。時差40分の戦闘が終わるのを、司令部はハラハラ待つしかないわけです。

 その他、すさまじいルールがぽんぽんと出てくるのですが、それは読んでのお楽しみということで。この戦闘ルールだけゲーム化してもえらく楽しいだろうなと思います。

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